歯科医からみる歯の問題と姿勢の関係
今回お話を伺ったのは
井出 徹先生 井出デンタルクリニック院長。「とにかく削らない銀座の歯医者さん」として、普通の歯科医では解消できない歯痛に悩む「歯科難民」の間で、クチコミで有名になる。「2012年版 日本の歯科100選」に選出。
『正しい姿勢』とは
よくTVなどで左右の腕を上にあげたとき左右の耳に沿っているとか、背中を壁につけてこうなると正しい姿勢だとか、猫背だから左右肩を開いて左右の肩甲骨が付くように、とか色々な情報が飛び交っています。
正しい姿勢は意識して維持するものではなく、又一時の外見上の姿勢ではなく、身体本来の動き、働きが最小の力で発揮される状況で、全身の筋肉のバランスが良く、全ての関節がバランス良く動き、骨格的なバランスも良いと定義づけられると考えています。
言い換えると座っている時、歩いている時、立っている時等、「全ての筋肉に緊張がなくバランスよい状態」が「正しい姿勢」です。
筋肉的には何処にも凝りが存在しないということです。
歯科的には左右の顎関節の動きに左右差がなく、時として大きく口を開けることが出来、痛みもなく、「かく」っとした音もなくスムースに動いていることです。
その時の顎口腔系を司る咀嚼筋群も凝り、或いは固くなく柔らかな状態であることが必須になります。
口を開けたり、閉じたり、顎を前に出したり、咀嚼運動時に関係する筋肉が、バランスよく収縮と伸展を繰り返すことです。
未だかつて歯科に来院される患者さんでこのような「正しい姿勢」の方にお目にかかったことがありません。
食いしばり等は身体全体の姿勢と密な関係にある
歯科医院に訪れる患者さんの姿勢は、先ず猫背です!
ですから左右の肩は前にあります。
また、腰骨も後ろに移動し、その結果頭の位置は前に出てほとんどの方が顎が上がっています。
正面から見ると頭の傾きもほとんどの方が右に傾いています。
左右の肩の位置は対称ではありません。鎖骨の高さも左右差があります。
この時点で口腔内では必ず食いしばり、噛みしめTCH(歯列接触癖)の状況にあります。
噛み合わせの問題ではありません。
先ず座る時に、浅く腰掛け仙骨が立つように意識し、足裏全体が床に着いているように座ってみてください!
このとき、背筋が伸びる様に意識し、上体をそらせない様に気をつけ、反り腰にならない様にしてください。
口の中では上下の歯が離れていることが少し実感できると思います。
腰が立つと自ずと左右肩は開き、前に出ている頭の位置も必ず少し戻ります。この時、顎は引かれた状況になります。
いきなり行うといろいろな部位に緊張を感じたり違和感等を感じると思いますが、正しい方向に徐々に体の姿勢を戻して行くことが重要になります。
猫背だからと言って左右肩をいきなり広げると、必ず反り腰になります。
正しい姿勢は何ぞやと言うことから治療の一歩が始まります!
食いしばり等は身体全体の姿勢と密な関係にあります。
歯に出る諸症状、顎凝り等は結果であって原因ではありません!
ぜひ、みなさんも日々の姿勢を意識してみてください。